【簡単理解】介護福祉士の国家試験義務化が5年先送り|理由や経過措置などを解説

介護福祉士は、介護資格の中でも唯一の国家資格ですが、義務化に向けての議論があるのをご存じでしょうか?介護福祉士の資格を取得するには「実務経験ルート」「福祉系高校ルート」「養成校ルート」の3つがありますが、国家試験を受けずに資格が得られる養成施設ルートは、国家試験を義務化が決定しています。ここで介護福祉士の国家試験義務化について、実情や今後の展望をおさらいしておきましょう。

介護福祉士の国家試験義務化|施行は5年延期

基本的に国家資格は、国家試験に合格することで取得できるものです。しかし介護福祉士は、養成課程を修了するだけで資格を得る方法があります。試験を受けずして資格取得が可能な介護福祉士ですが、2012年度より国家試験が義務化する予定でしたが、義務化施行は延期を繰り返し、最終的には2022年度から義務化の完全実施が決まっていました。しかし、今回また新たに、施行を5年間延期することが決定。そのため、2021年6月現在でも、介護福祉士の国家試験義務化は未施行です。

延期の理由

多様化・高度化する介護需要に対応するため、そして介護福祉士の質向上にも重要な国家試験。しかし、国家試験の義務化が人材確保を阻むことが懸念され、延期が続いています。特に大きく影響しているのは、外国人留学生の存在です。ここ数年で介護福祉士養成施設の外国人留学生数は年々増加しており、以下のように推移しています。

平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度令和元年度
養成施設数404401396386375
入学者数(人)8,8847,7527,2586,8566,982
外国人留学生数(人)942575911,1422,037
外国人留学生の割合1.1%3.3%8.1%16.7%29.2%

平成30年度以降は、養成施設の外国人留学生数が急増。今後も留学生の割合は大きくなると予想され、人手不足が深刻である介護業界の新たな即戦力として期待されています。しかし留学生にとって日本語で受けなければならない国家試験は、かなりハードルが高いものです。養成施設でスキル・知識を身につけたにもかかわらず、国家試験に落ちてしまっては働き手を失うことになってしまいます。さらに国家試験を壁に感じ、介護福祉士を目指す留学生が減少する可能性も考えられます。人材を失うだけでなく養成施設の経営難にも直結し、結果的に介護福祉士の減少に起因するとのことから、さらなる5年の延期が決定されたのです。

介護福祉士の国家試験義務化の詳細について

国家試験義務化の目的は、介護需要の多様化・高度化に対応できる人材の確保、そして養成施設では修了者のレベルにばらつきがある等の課題を解決することです。ここでは現行の介護福祉士資格の取得ルートを踏まえ、詳しく国家試験の義務化についてみていきます。

現行の介護福祉士資格の取得ルートと義務化が対象になるルート

介護福祉士資格を取得するには以下3つのルートがあり、国家試験義務化の対象となるのは「養成施設ルート」です。

プロセス
実務経験ルート ・3年以上の介護実務経験
・都道府県知事が指定する実務者研修の受講(450時間)

国家試験に合格後、資格取得
養成施設ルート ・都道府県知事が指定する介護福祉士養成施設で2年以上の履修(1,850時間)

養成施設卒業後、資格取得
福祉系高校ルート ・文部科学大臣及び厚生労働大臣が指定する福祉系高校で3年以上の履修(1,855時間)

国家試験に合格後、資格取得
経済連携協定(EPA)ルート ・EPA介護福祉候補者であり、従業期間3年(1,095日)以上、かつ従事日数540日以上の、介護の実務経験

筆記試験・実技試験を両方受験
もしくは、「介護技術講習」または「介護福祉士実務者研修」を受講して筆記試験のみ受験し合格後、資格取得

養成施設ルートのみ、国家試験なくして介護福祉士の資格が取得できます。そのため、留学生や介護職への転職者にとっては、介護福祉士になるための最短ルートだったのです。

義務化の施行(予定)スケジュール

国家試験の義務化が言い渡されてから今日まで、義務化の施行スケジュールは以下のように先延ばしにされてきました。

2007年(平成19年)資質向上の視点から社会福祉及び介護福祉士法等の一部改正法により、資格取得方法を一元化(国家試験義務化)
【2012年(平成24年度)施行】
2011年(平成23年)介護サービス基盤強化のための介護保険法等の一部改正法により、新たな教育内容(喀痰吸引等)を踏まえ、国家試験の義務化を3年間延期
【2015年(平成27年)施行に変更】
2014年(平成26年)医療介護総合確保推進法により、介護人材が困難な状況を踏まえ、国家試験の義務化を1年間延期
【2016年(平成28年)施行に変更】
2015年(平成28年)社会福祉法等の一部改正法により、平成29年度(2017年4月1日~)から養成施設卒業者に受験資格を付与し、5年間をかけて徐々に国家試験義務化を導入
2022年4月1日~
(令和4年度)
国家試験義務化の完全実施予定
【新たに5年延期】

義務化施行の経緯を見ると、施行予定年ごとに延期が決定していたことがわかります。最終的には令和4年度より完全実施予定であったものの、それも今回で5年延期となりました。国家試験を義務化する意向に変わりはないものの、高まる介護需要に対応できる人材確保のためには、どうしてもハードルの高い国家試験を義務化するのが難しいことが背景にあるのです。

介護福祉士の国家試験義務化までの経過措置

国家試験の義務化は決定事項であるため、それまでの経過措置として平成29年度からの養成施設卒業者には、卒業から5年間は暫定的に資格が付与される扱いとなりました。そして卒業後5年間で、以下いずれかの方法を実施することで引き続き介護福祉士の資格が保持できるとされています。

・卒業後5年以内に国家試験に合格する
・卒業後、原則5年間連続して介護実務に従事する

卒業後5年間で上記のいずれも満たせなかった場合は、国家試験の受験資格のみ保持していることになるため、国家試験に合格する必要があります。

国家試験の義務化がさらに延期したことに伴い、上記の経過措置も延長します。そのため養成施設卒業者は、2026年度までは既存の経過措置に則ることで介護福祉士の資格が保持できます。

経過措置延長の背景

経過措置もそのまま延長された背景には、国家試験義務化延期の要因ともなる留学生の増加があります。現行の経過措置であれば、卒業後5年連続して実務経験を積むことで資格が保持できるため、留学生は国家試験を受けなくとも介護福祉士として働けます。前述したように国家試験が義務化されることで、留学生が介護福祉士になるハードルが一気に上がります。これにより、留学生が母国に帰国してしまうことも考えられ、介護人材確保が難しくなります。介護人材が減少することで、人材不足が加速するだけでなく、養成校の経営も大打撃を受けることになるでしょう。これらが要因となり、国家試験義務化の延期、そして現行の経過措置延長に繋がっています。

准介護福祉士とは

国家試験義務化に関連し、新たな介護資格でもある「准介護福祉士」が設けられます。准介護福祉士の対象となるのは、国家試験未受験、または不合格の養成施設卒業者のみです。そのため、実務経験ルートと福祉系高校ルートの方は、国家試験未受験・不合格の場合には准介護福祉士を名乗ることができません。准介護福祉士は2016年度から導入予定でしたが、現在は2022年度までの延期が決定しています。また、准介護福祉士が、今後どのような立ち位置の資格になるかは未定です。

国家試験義務化で介護福祉士の環境は変わる?

介護福祉士の国家試験義務化は、介護ニーズの多様化・高度化の進展に対応できる資質の担保、そして社会的な信頼と評価を高めることを目的にしています。そのため、実装された場合は社会福祉士の環境向上が期待できますが、未だ実装されていないため、もたらす成果に関しては未知数です。

また、株式会社NTTデータ経営研究所が養成施設卒業者を対象に実施した調査では、8割以上が国家試験を受験することで、「介護に関する幅広い知識が身についた」「専門職としての自覚・心構えが高まった」と回答しています。そのため、義務化に関係なく、国家試験を受験することには大きな意味があるともいえます。

介護福祉士の国家試験義務化は決定しているが未施行

介護福祉士の国家試験義務化は、今後の介護ニーズに対応できる人材の確保、そして介護福祉士の社会的信頼を向上するために有効といえます。しかし、義務化により、人材確保の難化や養成施設の経営難の要因となりうるのも事実です。

今後、養成施設ルートで介護福祉士を目指す場合には、国家試験義務化の動きをしっかりと把握しておく必要があるでしょう。