痰吸引の手順とは?喀痰吸引研修修了者向け、方法・手順を解説!!

私たちは空気と一緒に吸い込んだ埃や菌などの異物を、痰として体外へ排出しています。健康であれば容易に排出することができますが、要介護者の中には、自力で痰を排出することができず、痰吸引を必要とする方も多くいらっしゃいます。今回は痰吸引をする際に必要な資格や手順をご紹介します。

痰吸引の目的とは?

痰吸引とは、加齢に伴う体力や意識レベルの低下、または病気などによって自力で痰や唾液、鼻汁を体外へ出せなくなった要介護者に器具を使って排出するお手伝いをすることです。

痰は本来、人間が空気を吸う際に無意識で取り込んでいるホコリや菌などを体内へ侵入させないために、気管で分泌され自力で排出するものです。

機械を使用しての痰吸引は、要介護者にとって楽な行為ではありません。しかし自力で排出することができない場合、窒息や呼吸困難、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。痰吸引は痰を取り除くことで呼吸を改善し、様々な病気の誘発を避ける目的があるのです。

喀痰吸引研修を実施できる介護士とは?必要資格は何?

必要資格:喀痰吸引等研修修了

介護者が誰でも痰吸引を実施できるわけではありません。喀痰吸引等研修を受講し、正しい知識と技術を得る必要があります。

喀痰吸引等研修は最近では介護現場で必要とされるスキルの一つであり、介護職員のスキルアップに繋がる技術としても注目されています。

研修の種類と対象者、実施できる内容

研修種類対象者実施できる内容
第1号研修修了者不特定多数の利用者・喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)
・経管栄養(胃ろう又は腸ろう、経鼻)
第2号研修修了者不特定多数の利用者・喀痰吸引(口腔内・鼻腔内)
・経管栄養(胃ろう又は腸ろう)
第3号研修修了者特定の利用者(ALSなどの神経筋疾患患者、重症心身障害患者など)・喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)
・経管栄養(胃ろうまたは腸ろう・経鼻)

痰吸引を始める前に準備する物

痰吸引をするために必要な準備物のチェックリストです。以下を参考にし、準備を行ってください。

痰吸引に必要な準備物
吸引器
吸引カテーテル
アルコール綿
水道水
コップまたはカテーテルが入る容器
手袋
ゴーグル
マスク
エプロン

【共通項】痰吸引の手順

痰吸入には3つの方法があります。

・口腔内からの痰吸入
・鼻腔内からの痰吸入
・気管カニューレ内部からの痰吸入

3つの手順に共通する項目をこの章では解説します。

手順一覧
Step1 手指を清潔にする
Step2 患者の意思を確認し体位を整える
Step3 吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する
Step4 吸引器の電源を入れる
Step5 吸引圧を合わせる
Step6 カテーテルを挿入する
Step7 痰を吸引する
Step8 カテーテルを引き出す
Step9 後始末をする

Step1.手指を清潔にする

石鹸を使用して、指の間、手の甲、爪も忘れずに洗いましょう。

Step2.患者の意思を確認し体位を整える

患者本人からの吸引の依頼を受ける、または患者の意思を確認してから痰吸引を行いましょう。痰吸引を行う環境や患者の鼻腔周辺、口の周り、口腔内を観察してから吸引をするのが大切です。

口腔内や鼻腔内から吸引を行う場合、患者を仰向けにし、顎を少しあげるとチューブが入りやすくなります。

Step3.吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する

吸引カテーテルを取り出して、接続が外れないように奥までしっかり差し込みましょう。

衛生的に操作ができているかを確認しながら痰吸引を行ってください。

Step4.吸引器の電源を入れる

吸引器が水を吸引できているか確かめましょう、水を通すことでカテーテル内の滑りがよくなりますカテーテルを薬液で浸けている場合は、水を吸って薬液を洗い流してください。

Step5.吸引圧を合わせる

アルコール綿でカテーテルの根元から先端部分を消毒後、カテーテルを指で折り曲げて、吸引圧をかけていない状態にしましょう。

吸引圧は100〜150mgHgで行われるのが一般的です。吸引圧に関しては医師または看護師の指示を必ず確認しましょう。

Step6.カテーテルを挿入する

挿入時は吸引圧をかけない状態でゆっくり、カテーテルを鼻腔または口腔、気管カニューレから挿入してください。

Step7.痰を吸引する

吸引時間は約10秒から15秒までが目安です。カテーテルからゆっくり指を離し、回転しながら吸引してください。

吸引する際は、カテーテルを吸引しやすい角度に調整し、痰の色や量、粘稠度を観察しながら吸引を行いましょう。

Step8.カテーテルを引き出す

ゆっくり左右に動かしながらカテーテルを引き出すようにしましょう。またその際には患者の呼吸や爪の色、唇の色がおかしくないか確認してください。

痰が残っている場合は、患者の息が整った後に再度吸引を行うようにしましょう。

Step9.後始末をする

①外側に付着している痰をティッシュやアルコール綿で拭き取る
②カテーテル、チューブ内に水を通して内側に付着している痰を吸引器に流し洗浄
③使用した吸引ビンも洗浄
④使用した手袋は破棄

【口腔内】痰吸引手順とコツ

手順一覧
Step1 手指を清潔にする
Step2 患者の意思を確認し体位を整える
Step3 吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する
Step4 吸引器の電源を入れる
Step5 吸引圧を合わせる
Step6 口腔内からカテーテルを挿入する
Step7 口腔内から吸引する
Step8 カテーテルを口腔内から引き出す
Step9 後始末をする

【STEP6以降】口腔内から痰吸引をする時の手順

①ゆっくりカテーテルを回しながら、カテーテルの半分ほどの長さを目安に入れる
②カテーテルの先端が咽頭付近まで届いたら吸引を行う
③ゆっくりと回転させながら10秒から15秒ほど吸引する(喉の奥に溜まっている痰も忘れずに吸引する)
④引き出したあとは発声や咳を患者にしてもらい痰が残っていないか確認する

口腔内から痰吸引をする時のコツ

患者が舌でカテーテルを押しのけたり、噛んでしまったり拒否行動が出てしまうこともあります。そのため口の中をよく覗き込みながらカテーテルを取り扱うことが必要です。嘔吐反射があれば喉の奥への吸引は無理矢理行わないようにしましょう。

【鼻腔内】痰吸引手順とコツ

手順一覧
Step1 手指を清潔にする
Step2 患者の意思を確認し体位を整える
Step3 吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する
Step4 吸引器の電源を入れる
Step5 吸引圧を合わせる
Step6 鼻腔内からカテーテルを挿入する
Step7 鼻腔内から吸引する
Step8 カテーテルを口腔内から引き出す
Step9 後始末をする

【STEP6以降】鼻腔内から痰吸引する時の手順

①手でカテーテルを持つ場合はペンを持つようにもち、患者に深呼吸をしてもらいながら、鼻の穴からカテーテルを数センチほどやや上むきに挿入する
②次にカテーテルを下向きに変えて、鼻腔内を這わすように奥まで挿入する
③鼻腔から気管内へ進める場合は患者に咳をさせたり、カテーテルを引いたり進めたりしながらゆっくり挿入する
④こよりを撚(よ)るようにゆっくりと左右に回転させながら10秒から15秒ほど吸引する

鼻腔内から痰吸引をする時のコツ順

無理やり挿入したり、何度も行ったりすると鼻の粘膜を傷つけてしまい出血の原因になるので注意が必要です。また、カテーテルが入りづらい場合は、反対側の鼻腔で行いましょう。

【気管カニューレ内部】痰吸引手順とコツ

手順一覧
Step1 手指を清潔にする
Step2 患者の意思を確認し体位を整える
Step3 吸引器のチューブと吸引カテーテルを接続する
Step4 吸引器の電源を入れる
Step5 吸引圧を合わせる
Step6 気管カニューレ内部へカテーテルを挿入する
Step7 気管カニューレ内部より吸引する
Step8 カテーテルを気管カニューレから引き出す
Step9 後始末をする

気管カニューレ内部から吸引をする時のコツ

①カテーテルを持っていない手で気管カニューレの回転コネクターのキャップをそっと外す
②にカテーテルについた水滴を入念に払う
③水滴を気管カニューレ内に落とさないように操作する
④吸引を終了しカテーテルを引き出したらすぐにコネクターのキャップを閉じる

気管カニューレ内部から吸引をする時のコツ

カテーテルは気管カニューレの先端を越えないようにしましょう。気管カニューレを引っ張ると痛みを与えてしまうので注意が必要です。気管カニューレ内部の吸引を行う場合はできるだけ短時間(15秒)で行うのもポイントです。

気管カニューレ内部からの痰吸引がやりづらい時のコツ

気管カニューレ内部からの痰吸引では、痰を取りきれないことが多いです。痰が取りきれない理由は吸引圧が原因ではなく以下の理由が考えられます。

・痰が上気道まで達していない
・吸引孔の位置がずれている
・痰の粘稠度が高く取りにくい

うまく痰が取れない場合は呼吸理学療法や体位ドレナージなどで痰の移動を促したり、カテーテルの移動や回転を行ったりしてみてください。また痰の粘稠(ねんちゅう)度が高い場合は水分摂取、加湿、去痰剤の使用なども有効です。

口腔、鼻腔、気管カニューレの痰吸引の手順を再確認しましょう!

各痰吸引の手順とコツを解説しました。手順は共通する部分がほとんどですが、カテーテルを挿入したり痰を吸入したりする点で少し手順が異なります。これを機会にそれぞれの注意点を再確認してみましょう。

介護職の方にとって、喀痰吸引等研修を受けることで痰吸引を実施できるようになれば、仕事範囲を広げることもできます。喀痰吸引等研修を修了することは今後のキャリアアップにも繋がるので、受講を検討されてはいかがでしょうか。

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