介護福祉士実務者研修とは?初任者研修との違いや受講費用について詳しく解説
著者: ゲートウェイ
更新日:2023/12/22
公開日:2020/06/25
介護福祉士実務者研修は、実践的な介護の知識と技術の習得を目的とした資格です。平成 28年度の介護福祉士国家試験から、実務経験 3年に加え、実務者研修修了が新たに受験資格に加えられました。介護の資格には介護職員初任者研修もありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、介護福祉士実務者研修の取得を検討している方に向け、初任者研修との違いや、具体的な受講内容について解説していきます。
目次
介護福祉士実務者研修とは?
介護現場で活躍するため、より実践的な知識を身に着けたいという方に向けた資格が、介護福祉士実務者研修です。
実務経験3年とともに、介護福祉士国家試験の受験資格であるため、将来介護福祉士を目指す方にとっては必須。介護福祉士実務者研修を修了すると、訪問介護事業所では配置が義務付けられている「サービス提供責任者(サ責)」になることができるため、転職の際にも有利な資格。履修科目には痰吸引や経管栄養についての科目もあるため、医療的ケアに関する知識を学ぶことも可能です。
介護福祉士実務者研修を受講する場合は保有資格によって、受講時間や研修科目、受講料が異なります。受講料は無資格の場合10万~20万ほど。初任者研修または、ヘルパー2級資格保有者は6万~10万ほどと言われています。
保有資格別 研修要件
保有資格 | 無資格 | 介護職員基礎研修 | 初任者研修 | ヘルパー1級 | ヘルパー2級 | ヘルパー3級 |
---|---|---|---|---|---|---|
受講時間 | 450時間 | 50時間 | 320時間 | 95時間 | 320時間 | 420時間 |
受講期間 (目安) |
約6ヶ月 | 約1ヶ月 | 約4ヶ月 | 約2ヶ月 | 約4ヶ月 | 約5ヶ月 |
研修科目 | 20科目 | 1科目 | 11科目 | 2科目 | 12科目 | 17科目 |
更新を伴う 資格有効期限 |
なし | なし | なし | なし | なし | なし |
経験を重ねながら介護福祉士を目指す方におすすめ
介護福祉士実務者研修は、初任者研修と同様に、経験や年齢問わず受講することができます。初任者研修をすでに修了している場合には、130時間分の受講期間と科目が短縮されます。
いきなり実務者研修を受講することもできますが、基礎知識を踏まえた上で進む科目もあるため、無資格未経験であれば初任者研修からの受講をおすすめです。実務経験が3年以上あれば介護福祉士国家試験も受験でき、その際の実技試験は免除されるというメリットも。経験を重ねながら介護職でのキャリアアップを目指している方は是非ご検討ください。
介護福祉士実務者研修と初任者研修はどう違う?
介護福祉士実務者研修と初任者研修は、どちらも無資格未経験であってもチャレンジできる資格です。どちらが自分に合っているのか分からないという方は、両者の違いを見比べてみましょう。
実務者研修は介護福祉士試験の受験資格
介護資格の入門編ともいえる資格が、以前のホームヘルパー 2級にあたる初任者研修です。一方、介護福祉士実務者研修は、介護職のキャリアパスで初任者研修の上位にあたる資格となります。
介護福祉士試験の受験資格のひとつでもあるため、より実践的な知識を持ち、現場で長期的に活躍したいとお考えの方におすすめです。
受講科目と受講時間
初任者研修は受講科目が9科目( 130時間)、費用は約7万~8万円。実務者研修は、初任者研修の基礎知識により専門的な科目が追加され、無資格の場合は全20科目(450時間)の受講となります。また、一部の講座は通信講座の場合でもスクーリングが必須です。
実務者研修は基礎知識をより掘り下げた内容となるため、事前に取得している資格によっては、受講期間と費用を削減することも。
医療的ケアについて学ぶなら実務者研修
実務者研修にのみ設けられている履修科目が、「医療的ケア」(50時間)です。医療的ケアとは、痰吸引や経管栄養といった、本来医師や看護師が行う医療行為。在宅介護の現場でも必要となる医療的ケアは、そのニーズの高まりから、 2012年より研修を修了した介護職員も対応可能となりました。
実務者研修で学ぶ具体的な内容は、痰吸引や経管栄養の準備から実施、利用者への声掛けや記録など。実務者研修を修了した後、さらに喀痰吸引等研修を受講することで、実際の介護現場で医療的ケアを実施することができます。
介護福祉士実務者研修のメリットとは?
介護福祉士実務者研修は、初任者研修と比べ、受講費用や時間が必要となる資格です。資格取得には、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。
サービス提供責任者になることができる
サービス提供責任者は、訪問介護事業所で配置が義務付けられている資格です。訪問介護計画の作成や、利用申し込みに関わる調整など、利用者に直接関わる業務にあたります。サービス提供責任者になるには実務者研修が必須ですが、実務経験は必要ありません。
「訪問介護の仕事がしたい」「現在訪問介護の現場に勤務しており、更なるステップアップを望みたい」という方にとって、介護福祉士実務者研修は大変有益な資格となるでしょう。
転職時に有利な資格
介護職は無資格未経験であっても、他業種から転職しやすい職種です。しかし、事業所側は人手不足だからこそ、一定のスキルのある有資格者を求めています。そのため、介護福祉士実務者研修は、転職時にも就職先の間口をより広げることになるでしょう。
特に、介護福祉士実務者研修を求める訪問介護事業所では、高いニーズを期待することができます。
介護スキルを向上させワンランク上の介護職員に
介護福祉士実務者研修では、初任者研修で履修する科目に加え、より掘り下げた内容を学ぶことになります。そのため、介護に関する基礎知識だけでなく、より実践的な技術と知識を身に着けることが可能です。医療的ケアの専門的知識を活かせば、現場での介護サービスの質もより一層向上。無資格の介護士に比べ、給与のベースアップを期待することもできるでしょう。
資格取得の費用や合格率、スクール選びのポイントは?
新たに資格を取得しようと考えた時に気になるのが、必要な費用や合格率ですよね。
介護福祉士実務者研修を修了するためには、民間スクールやハローワークの指定施設(求職者支援制度等を利用する場合)などで必要科目を受講する必要があります。どのような点にポイントを置いて、受講先を選べば良いのでしょうか。
介護福祉士実務者研修の受講料と合格率
介護福祉士実務者研修には、原則的に修了試験は必要とされていません。スクールによっては筆記試験を設けるところもありますが、講義内容を理解していれば、ほぼ100%合格する内容となっています。不合格となった場合にも追試があるため、全ての科目を受講し、最低限の勉強を怠らなければ実務者研修は修了できると考えてよいでしょう。
実務者研修の費用は無資格者の場合、約10万~20万円ですが保有している資格によっても異なります。また、ハローワークの求職者支援制度を利用した講座であれば、テキスト代と交通費のみで受講することも可能です。
転職支援サポートと割引制度
資格取得をきっかけに、介護職への転職をお考えの方におすすめしたいのが、就職支援サービスの設けられたスクールです。介護福祉士実務者研修を修了後、スクールの紹介する事業所や施設に就職すれば、受講料が無料になる場合も。希望の雇用形態や施設について、スクールと相談しながら受講できるのも安心ですね。
また、雇用保険の被保険者であり、一定の条件を満たす方であれば教育訓練給付制度を利用することもできます。受講料の20%~50%が給付されるため、自身が給付金の対象となるかどうか、受講前にぜひ一度ハローワークに問い合わせてみることをおすすめします。
スクーリングの際も通いやすいスクール
介護実務者研修は、医療的ケアの知識を修得するため、スクーリング講習が必須となります。そのため、スクールを選ぶ際には、通いやすい場所にあるかどうか検討することも大切です。仕事や子育てをしながら通う方であれば、急に欠席した場合、選択できる振替日が設けられているかどうかも大切なポイントとなるでしょう。
短期間で修了する自信がないという方は、受講期間延長の有無についても、ぜひチェックしてみてくださいね。
介護福祉士実務者研修の取得を助ける貸付金制度
平成30年度、「介護離職ゼロ」の実現を目指し、厚生労働省は「介護福祉士実務者研修受講資金貸付事業」を策定、都道府県が実地することとなりました。介護福祉士資格取得に必須となる実務者研修の受講負担が軽減されるよう、返済免除が付いた貸付制度となっています。
介護福祉士として働けば返還免除の対象に
介護福祉士実務者研修の貸付制度は、20万円を上限に、受講に必要な資金を貸し付ける制度です。
注目すべき点は、返還免除制度が設けられていること。実務者研修を修了し介護福祉士資格を取得後、2年間介護職に従事した場合には、返還が全額免除されます。そのため、将来的に介護福祉士として活躍したいとお考えの方には、大変有益な制度であると言えるでしょう。
介護福祉士へのステップアップに介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、将来的に介護福祉士資格を目標とする方に必須となる資格です。介護の実践的な知識と技術を修得することができるため、初任者研修として働いた経験を活かし、さらにスキルアップしたいという方にもおすすめです。スクーリングが必須となる科目もあるため、受講を検討する際には、通いやすい場所にあるスクールを選びましょう。
将来は介護福祉士資格を取得し、長期的に介護現場で活躍したいとお考えの方は、給付金や貸付金など、様々な制度を活用した受講も検討してみましょう。
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著者プロフィール
ゲートウェイ
異業種含め、人事採用担当として15年以上のキャリアを積んだ経歴を持つ40代男性。現在はソラストの介護採用スタッフとして活躍している。スタッフの負担軽減のため、IT導入や業務ルールの改善に強みを持つ。